「いらっしゃい・・よく来てくれたね」
遥さまは、大きくドアを開くと、私を部屋に招き入れてくれた。
遥さまのマンションのお部屋は、明るくて清潔感があってセンスがよくって、、、、そして、ほっとする。
ここに遊びに来るのは、まだ3回目だと言うのに、すでに「私が1番大好きな場所」になっていた。
「誕生日・・おめでとう・・」
遥さまは、まだ靴も脱いでいない私を、きゅっ、と抱きしめてくれる。
「いい子にしていた?」
遥さまは、会うと必ずこう聞く。
「ん、、、っと、ちょっと悪い子だった。」
おやおや・・・・と、遥さまは、私の顔を覗きこむ。
「どんな『悪い子』をしたのかな・・?」
「あのね、、、こないだSMチャットで公開プレイをしようとしたの、、」
「そうか・・・楽しかった?」
「ううん、、、だって、、、結局やらないで落ちて来ちゃった、、」
「どうして?僕に・・遠慮したの・・?」
少し心配そうな遥さまの声。
「遠慮じゃ、、ない、、淋しいからって、、他で解消するのが、、嫌だ、、って、、気がついたから、、」
「そうだったね・・・かまってあげられなくって・・悪かったね・・」
遥さまは、もう一度きゅっと抱きしめると、おでこにキスをしてくれた。
「今日はね、僕が食事を作ってあげるからね。」
遥さまはそう言うと、私をソファに座らせる。
「できるんですかぁ、、料理?あ、わかった。カップラーメンだ。」
「こらこら・・・」
遥さまは、こつん、と、私の頭を叩く。
「パスタだよ。」
「あは。期待しています。」
「期待されたら・・・困るなぁ・・」
困るなぁ・・と言いながらも、遥さまはとても機嫌がよさそうだった。
「今日は、とってもご機嫌ですね」
からかうように私が言うと、遥さまは声を出して笑う。
「今日は・・・って、なんだかいつも機嫌悪そうな言い方するなぁ・・あはは」
遥さまは、私の隣に腰掛けると、肩に手を回してくる。
「はい。一昨日まで『決算』で、チョーご機嫌斜めで、散々放置されて、、、たまに連絡取れたと思ったら、 できない課題ばっかり与えられて、、、ゆきなはかなり苛められましたから」
「あはは・・そんなことしたっけ・・・?」
遥さまはおどけたように笑いながら、私の髪をひとつまみ取ると、軽く弄んだり引っ張ったりする。
隣に座っているときの、遥さまの癖。
「今日は・・・ずっと一緒にいようね・・・・」
うれしくて思わず抱きついた私を、遥さまは、痛いくらいに抱きしめてくれた。
初めてここに来た時に、私が持ってきたピンクのエプロンをかけると、遥さまはキッチンに消えて行った。
スーツ姿の時はピリピリしていて、近寄りがたい雰囲気の遥さまも、今日はトレーナーにジーンズ。
おまけにピンクのエプロンをしている姿は、とてもSさまとは思えない。
思わず「可愛いなぁ、、」という言葉が口から出てしまった。
遥さまと私の出会いは2年前。とある出会い系サイトの掲示板だった。
そのころの私は、何もかもが嫌で、何もかもが信じられなくなっていた。
愛し合っていると信じていた恋人が、私の知らないうちに他の女性と結婚していたり、 信頼していた友達が、私の父親と援助交際していたり、叔父に呼び出されて待ち合わせ場所に行ってみたら、 ホテルに連れ込まれそうになったり、担任に放課後残るように言われたので待っていたら、いきなり襲われそうになったり、、、
このまま、、ずっと、、、誰にも会いたくない、、、このまま、、、、消えてなくなりたい、、、
そう思う反面、誰かに私の存在に気がついて欲しくて仕方なかった。
そんな時、携帯にメールが入ってきた。
迷惑メールに分類される出会い系サイト。
いつもは受信拒否にしたまま削除しているのに、その時に限って受信する気になった。
掲示板を開いたとき、真っ先に目に入ったメッセージ。
『僕はここにいる・・・誰か・・僕に気がついて・・・・』
私は返信を書いた。
『私が気がついてあげる、、、私は、、ここよ、、、』
掲示板からメールに。メールからチャットに。チャットから電話に。
顔も名前も知らない相手に、私は夢中になった。
電話で話をする時間は、夜11時から12時までにしようと、2人で決めた。
いつも穏やかな話し方をする彼が、仕事で苛立っていると声が少し低くなること。
とりとめのない私の話に、しっかり耳を傾けて聴いてくれること。
時々彼が話してくれる、私の知らない淫靡な世界のこと。
たまに、わざと私にいやらしい言葉を言わせたり、実際に課題を出してそれを実行させたりすること。
毎晩11時になるのが楽しみで仕方なかった。
一緒の時間を共有している、と思うだけで、充分幸せな気分になれる。
そんな気持ちにさせてくれる彼に、とっても感謝していた。
そして1年。
彼の誕生日に、私たちは初めて、会うことになった。
初めて降りる駅。
私は期待と不安で、ドキドキしていた。
私たちは、写真の交換をしていない。
知っているのはメールアドレスと携帯の番号だけ。
私が駅の改札を抜けたその時、後ろから肩を叩かれた。
「すぐに・・わかったよ・・・」
その声は、確かに彼の声だった。
「はじめまして・・・って言うのも変かな。」
彼はてれたように頭をかく。
「遥、です。」
彼は右手を差し出した。
「ゆきな、、です、、、」
私はその手を両手で包んだ。
「会いたかった・・・」
彼は人前だというのに、その場で抱きしめてくれた。
(2)へ続く
(My妄想小説サイト:クリスタルムーンより転機)
遥さまは、大きくドアを開くと、私を部屋に招き入れてくれた。
遥さまのマンションのお部屋は、明るくて清潔感があってセンスがよくって、、、、そして、ほっとする。
ここに遊びに来るのは、まだ3回目だと言うのに、すでに「私が1番大好きな場所」になっていた。
「誕生日・・おめでとう・・」
遥さまは、まだ靴も脱いでいない私を、きゅっ、と抱きしめてくれる。
「いい子にしていた?」
遥さまは、会うと必ずこう聞く。
「ん、、、っと、ちょっと悪い子だった。」
おやおや・・・・と、遥さまは、私の顔を覗きこむ。
「どんな『悪い子』をしたのかな・・?」
「あのね、、、こないだSMチャットで公開プレイをしようとしたの、、」
「そうか・・・楽しかった?」
「ううん、、、だって、、、結局やらないで落ちて来ちゃった、、」
「どうして?僕に・・遠慮したの・・?」
少し心配そうな遥さまの声。
「遠慮じゃ、、ない、、淋しいからって、、他で解消するのが、、嫌だ、、って、、気がついたから、、」
「そうだったね・・・かまってあげられなくって・・悪かったね・・」
遥さまは、もう一度きゅっと抱きしめると、おでこにキスをしてくれた。
「今日はね、僕が食事を作ってあげるからね。」
遥さまはそう言うと、私をソファに座らせる。
「できるんですかぁ、、料理?あ、わかった。カップラーメンだ。」
「こらこら・・・」
遥さまは、こつん、と、私の頭を叩く。
「パスタだよ。」
「あは。期待しています。」
「期待されたら・・・困るなぁ・・」
困るなぁ・・と言いながらも、遥さまはとても機嫌がよさそうだった。
「今日は、とってもご機嫌ですね」
からかうように私が言うと、遥さまは声を出して笑う。
「今日は・・・って、なんだかいつも機嫌悪そうな言い方するなぁ・・あはは」
遥さまは、私の隣に腰掛けると、肩に手を回してくる。
「はい。一昨日まで『決算』で、チョーご機嫌斜めで、散々放置されて、、、たまに連絡取れたと思ったら、 できない課題ばっかり与えられて、、、ゆきなはかなり苛められましたから」
「あはは・・そんなことしたっけ・・・?」
遥さまはおどけたように笑いながら、私の髪をひとつまみ取ると、軽く弄んだり引っ張ったりする。
隣に座っているときの、遥さまの癖。
「今日は・・・ずっと一緒にいようね・・・・」
うれしくて思わず抱きついた私を、遥さまは、痛いくらいに抱きしめてくれた。
初めてここに来た時に、私が持ってきたピンクのエプロンをかけると、遥さまはキッチンに消えて行った。
スーツ姿の時はピリピリしていて、近寄りがたい雰囲気の遥さまも、今日はトレーナーにジーンズ。
おまけにピンクのエプロンをしている姿は、とてもSさまとは思えない。
思わず「可愛いなぁ、、」という言葉が口から出てしまった。
遥さまと私の出会いは2年前。とある出会い系サイトの掲示板だった。
そのころの私は、何もかもが嫌で、何もかもが信じられなくなっていた。
愛し合っていると信じていた恋人が、私の知らないうちに他の女性と結婚していたり、 信頼していた友達が、私の父親と援助交際していたり、叔父に呼び出されて待ち合わせ場所に行ってみたら、 ホテルに連れ込まれそうになったり、担任に放課後残るように言われたので待っていたら、いきなり襲われそうになったり、、、
このまま、、ずっと、、、誰にも会いたくない、、、このまま、、、、消えてなくなりたい、、、
そう思う反面、誰かに私の存在に気がついて欲しくて仕方なかった。
そんな時、携帯にメールが入ってきた。
迷惑メールに分類される出会い系サイト。
いつもは受信拒否にしたまま削除しているのに、その時に限って受信する気になった。
掲示板を開いたとき、真っ先に目に入ったメッセージ。
『僕はここにいる・・・誰か・・僕に気がついて・・・・』
私は返信を書いた。
『私が気がついてあげる、、、私は、、ここよ、、、』
掲示板からメールに。メールからチャットに。チャットから電話に。
顔も名前も知らない相手に、私は夢中になった。
電話で話をする時間は、夜11時から12時までにしようと、2人で決めた。
いつも穏やかな話し方をする彼が、仕事で苛立っていると声が少し低くなること。
とりとめのない私の話に、しっかり耳を傾けて聴いてくれること。
時々彼が話してくれる、私の知らない淫靡な世界のこと。
たまに、わざと私にいやらしい言葉を言わせたり、実際に課題を出してそれを実行させたりすること。
毎晩11時になるのが楽しみで仕方なかった。
一緒の時間を共有している、と思うだけで、充分幸せな気分になれる。
そんな気持ちにさせてくれる彼に、とっても感謝していた。
そして1年。
彼の誕生日に、私たちは初めて、会うことになった。
初めて降りる駅。
私は期待と不安で、ドキドキしていた。
私たちは、写真の交換をしていない。
知っているのはメールアドレスと携帯の番号だけ。
私が駅の改札を抜けたその時、後ろから肩を叩かれた。
「すぐに・・わかったよ・・・」
その声は、確かに彼の声だった。
「はじめまして・・・って言うのも変かな。」
彼はてれたように頭をかく。
「遥、です。」
彼は右手を差し出した。
「ゆきな、、です、、、」
私はその手を両手で包んだ。
「会いたかった・・・」
彼は人前だというのに、その場で抱きしめてくれた。
(2)へ続く
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